「ロボットが役に立つ分野で、自分が夢中になれるものを探すことです」 サイファイ・ワークス社創業者へレン・グレイナー インタビュー その<2>

ヘレン・グレイナー氏は2008年、新型の自律航空機(UAV)を開発するサイファイ・ワークス社を起業した。同氏は、掃除ロボット、ルンバを生んだアイロボット社の共同創設者として知られ、ロドニー・ブルックス、コリン・アングル両氏と共に、ロボット技術が一般消費者向けの製品として浸透していく経緯を見守った。

team-helen-greiner-webボストンのサイファイ・ワークス社を訪ね、同社の技術、そして起業の体験について話を聞いた。(尚、インタビューは2013年夏に行われている。同社はその後700万ドルのシリーズAの投資を受けた。)

その<1>に続いて、アイロボット社の起業時代の話や、現在のロボット界についての見方を聞いた。

Q. アイロボット社でも共同創業者でしたが、今回の起業はそれとは違っているといった点はありますか。

A. そうですねえ。アイロボット社は本当にスローな走り出しで、「一夜で収めた成功」が起こるまで最も長く時間がかかった例だったと、よく冗談で言っています。IPO までに15年かかり、ベンチャー・キャピタルから投資を得るまで8年、そして最初の5年間は、給料支払日に銀行に残金があったことがありませんでした。給料日が近づくと、いつも仕事の手を止めて電話を握り、業者に支払いを待ってくれと頼むのが私の役目でした。納品したら支払うから、と。それがずいぶん長い間続きました。アイロボット社が試したビジネスモデルは16もありましたが、成功したのは2つだけ。

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Q. しかし、今やアイロボット社は新しいテクノロジーをどんどん生み出し、同時に消費者向け商品で成功するという、理想的なロボット会社ではありませんか。

A. 確かに、新たなテクノロジーを生み、それが高付加価値のあるイノベイティブな製品となって消費者ビジネスを支えているという点はうまくいっています。もちろん、消費者向け商品ではコスト削減を図るための工夫をいろいろやっていますが、OSやセンサーやプログラムなど、底流の技術は変わりません。

Q. 今、ロボット業界の動きをどう見ていますか。ロボットでお金を儲ける会社が出てくると思いますか。

A. 今ならば、もう出てきてもいい頃でしょう。ただ、どんな現実的なニーズを捉えた用途を考えているのか、そこを抑えていなければうまくいきません。

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Q. 高齢者を助ける家庭用ロボットがそのスポットだと言われますが、そう思いますか。

A. 重要なのは、厳密に何をやって助けるのかです。今は本当に助けになるようなことはやっていないのではないでしょうか。例を挙げると、排泄や身体をきれいにするといったようなこと。こういうことは、あまりみんな話題にしたがりません。そうしたところにこそ、本当はロボットが必要なはずです。家庭でのヘルスケアを、手を汚さずに語ることはできない。とは言え、私は多くの高齢者からルンバのお礼を言われました。ルンバがあるおかげで、自立した気持ちで生活ができる、と。

 

Q. ボストンとシリコンバレーでは、ロボット産業に違いがありますか。

A. ありますね。シリコンバレーからは、少数の例外を除いて、あまり製品が出てきません。あったとしても、ボストンの真似だったりする。けれどももっと手つかずの市場があるはずです。そのうち独自の特質を見いだしていくことと思います。また、シリコンバレーにはお金がある。ロボットに対しても資金が入っている。ただ、お金があることが必ずしもいいこととは限りません。お金を無駄遣いするのは簡単ですが、スタートアップはコストを切り詰めて、効率的に開発を進める方がいいこともありますから。

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Q. 日本のロボット界は、どう見ていますか。

A. いろいろなイノベーションがあって、面白いものが出てきていると思います。そうは言っても、2年ほど前の知識でしかないかもしれません。ヒューマノイド・ロボットやヘビ型のロボットも見ました。ただ、ロボット製品がまだありません。アメリカは、起業家精神が広まっているので、これが活性化につながって、スタートアップからイノベイティブな製品が生まれるきっかけとなっている。一方、大企業はケタ違いに大きなスケールの問題解決をしなれば採算が合わないので、どんどん複雑になってしまいがちです。日本の大学でも、今ならば同じような動きがあるのかもしれませんが、ないのならばぜひやるべきです。

 

Q. 最後に、ロボットを勉強している学生にアドバイスを下さい。

A. ロボットが役に立つ分野で、自分が夢中になれるものを探すことです。そして、大学院や博士課程にいるのならば、卒業後にやりたいことに少しずつチューンしていく。私が今学生だったら、キックスターターやインディゴーゴーで資金を集めようとしたでしょう。それをさら繋げていって、ベンチャー・キャピタルから投資を受けられるかもしれない。もし日本がダメならば、シリコンバレーに来ればいいんです。P1000591

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