<イベント・レポート>『ディベロッパー・ウィーク2015』 ロボティックスDevサミット
2月半ば、およそ1週間にわたってサンフランシスコでディベロッパー・ウィークが開催された。その間、2月11日にはロボティクスに焦点をあてた展示とセッションが行われた。
ディベロッパー・ウィークは今年で3回目。規模はまだそれほど大きくないが、主立ったテクノロジー企業やアプリケーション開発会社が展示を行った。今回、特別に設けられていたのは、ロボティクスと女性開発者向けのトラック。ロボット関連の様子を簡単にご紹介しよう。
まず、展示コーナーから。
人だかりができていたのは、アルデバラン社のナオのまわりだ。このディベロッパー・ウィークはソフトウェア開発者が中心だが、ナオを知らない人々が結構多いようなのは意外である。立ったり座ったり、起き上がったり、しゃべったりするたびに歓声が上がっていた。
高性能ハプティック・フィードバック技術を開発するフォース・ディメンション社のデモも人気。同社はスイスが拠点で、2001年創設。回転円盤ディスクに取り付けられた3つのアームの先にフィードバック・デバイスが取り付けられており、スムーズで微細な動きを支え、手先に感触のフィードバックを与える。医療ロボットの他にも、ロボット操作、宇宙開発、ナノテクノロジー、トレーニングなどで使われている。
展示会出展者は他にも、テレプレゼンス・ロボット「クビ」のリボルブ・ロボティクス社、3Dプリンターのテンポ・オートメーション社、ロボット開発で足取りのキャプチャーにも使われるシステムを開発するフェーズスペース社などがあった。
セッションでも、何人かのロボット関係者がトピックを提供した。
オープンソース・ロボティクス財団(OSRF)のタリー・フット氏は、ロボット開発にもウェブ2.0に似たような開発環境が整いつつあると強調。ROS、ツール、機能、エコシステムが拡充していると述べた。ROSの開発者は現在200人以上いるという。
グーグルが開発した全方向スクリーンの「リキッド・ギャラクシー」も、インタラクション機能でROSを利用、またトヨタの介護ロボット「ヒューマン・サポート・ロボット(HSR )」もROSを使っている。
ROSは自在に利用できるため、実際にどの企業が何に使っているのかの実態がつかみにくいと語っていた。日本での利用は、世界で4位とのこと。
昨年、子供がプログラムできるおもちゃロボット「ダッシュ(Dash)」と「ドット(Dot)」を発表したワンダー・ワークショップ社共同創設者のソーラブ・グプタ氏は「ロボティクスのプラットフォーム」を目指したと語っている。ダッシュとボットは、タブレットなどから操作することも可能だが、プログラムして木琴を叩いたり、拍手に音で応えたりするようにもできる。
スクリーンの中のゲームとは違って「タンジャブル」、つまり現実世界で手触りや手応えのあるインターフェイスが存在していることが、子供の学習おもちゃとしては重要だと信じているという。また、ロボットであることで、子供たちがコラボレートしやすくなる点も利点という。
ダッシュとボットは、これまでそれぞれ3万5000個出荷したらしい。
アルデバラン社ボストン・オフィスのニコラス・リゴードとジェームス・ディートリッチ両氏も登壇。同社のロボット、ロメオ(Romeo)とナオ(Nao)を紹介した。
ロメオは、家庭での介護に役立つロボットとして研究所や開発を行う企業向けに提供されている。140センチの高さで、ドアを開けたり階段を上ったり、またテーブルの上からモノを取ったりできる。現在、ヨーロッパで「ロメオ2」プロジェクトが進行中だ。
ナオについては、ともかく開発者を増やしたいとアピールしていた。現在ナオは、ゲームや教育用に開発が行われている。教育では、自閉症児のコミュニケーションの相手となったりするが、その際に子供がナオに何かを教え、それに対してナオが反応をするといったようなやり方もあるようだ。
また、ウェブ・サービスの一環としての利用もある。たとえば、パーティーで写真を撮ったりするようなこと。さらに小売やマーケティングでの利用。店頭のロボット見たさに客がやってくるようなケースで、ソフトバンクの店舗への客足は、ペッパーによって20〜40%増えたと語っていた。
もちろん、ダンスやコメディーなど、アートやエンタテインメントでの利用も多い。客席の笑いの大きさに従って、次のせりふを変えるようプログラムしているコメディアンもいるそうだ。
ナオの価格は昨春、1万2000ドルから8000ドルに値下げされ、一般の人々向けにも販売が開始されている。本当は、2000〜3000ドルくらいの値段になるのが理想的だと2人は述べていた。スマートフォンほどの安いモデルにはならなくとも、数100ドルでゲーム・コンソールを買い、60ドルくらいのアプリで遊ぶのに似た、人気のあるデバイスとして、ロボットが育って欲しいという希望だ。