ジーボ、国外出荷を断念
家庭ロボットとして期待がかけられているジーボ(Jibo)が、アメリカとカナダ以外への出荷を断念するという。『ロボティクス・トレンズ』が伝えている。
ジーボは、クラウド・ファンディングのサポーターらにメールを送り、「あなたの国では、われわれが考える基準でジーボが機能しない」という理由でアメリカ、カナダ以外への出荷をあきらめたと伝えている。
ジーボは、自然言語でやりとりできるが、アメリカにサーバーを置いているために音声認識パフォーマンスに遅延が起こる。また、英語を母国語としないユーザーがなまりのある英語で問いかけると十分に答えられないという懸念もいだいたようだ。
さらにもうひとつの理由は、ユーザーのプライバシー問題だ。各国には消費者個人情報保護法があるが、アメリカにサーバーを置いていてはそれらに遵守しきれないと判断したようだ。ジーボをローカルにすることによってしか、これは解決できないという。つまり、日本ならば日本語を理解し日本語を話すジーボを開発し、日本国内のサーバーで処理するということだ。
ロボット・ビジネスは国境を越えてユニバーサルに拡大するかと思っていたが、具体的な展開段階になるといくつもの障害が出てくるということが、この例からわかる。
周知のようにジーボは、KDDIや電通ベンチャーズからの投資資金を得ている。また、バンダイ・ナムコ・ヨーロッパとの提携も発表されている。今後、日本でローカル版の開発が行われることも考えられるだろう。ジーボ自体は、2017年末までには一部の国際市場に進出すると述べている。
2014年秋に目標額の23倍近くである370万ドルを集め、クラウド・ファンディングで大成功を収めたジーボは、当初2015年9月に第1回の出荷を行う予定としていたが、それも遅れている。
関係者の中には、「短期間にあまりにも多くの機能を盛り込むと約束し過ぎた」と見る人々もいるようだ。また、よく言われるのは、研究者が製品を手掛けると高すぎるレベルを目指したり、あるいは完璧主義に陥ることがあるという点。ジーボもその一例だろうか。ジーボは、MITメディアラボで長年ロボットを研究してきたシンシア・ブレジール准教授が共同創業した会社だ。
クラウド・ファンディングでのジーボのサポーターは7418人に上り、その多くは海外在住者という。今回の発表に納得できない人々もたくさんいるようで、同社のフェイスブックやレディットでは不満が溢れている。今回の発表が遅れたことへの苦情も多い。ヨーロッパの消費者組織に相談すると投稿している人もいる。
いずれにしても、アメリカ、カナダ以外のサポーターには、クラウド・ファンディングで寄付した資金を返金するとのこと。通常、クラウド・ファンディングでプロジェクトが失敗すると、寄付金は戻って来ない。それに比べるとマシだが、期待していたファンの落胆は大きい。返金の申請は9月9日まで。