アマゾン・ロボティクス・チャレンジ(ARC)で優勝したのは、チープなロボット
さる7月27日から30日まで、名古屋で開催されたアマゾン・ロボティクス・チャレンジ(ARC)では、ゼロから自分たちのロボットを作ったオーストラリアのACRV(オーストラリア・ロボティック・ビジョン・センター)が優勝した。彼らのロボットは見かけが変わっていただけではなく、とてもチープに作られている。
ACRVは、クィーンズランド工科大学、アデレード大学、オーストラリア国立大学、モナシュ大学が関わる組織で、クィーンズランド工科大学に本拠を構える。2016年のアマゾン・ピッキング・チャレンジではピッキングで6位を獲得している。
ACRVのロボット「カートマン(Cartman)」は、「カーテシアン(デカルト的)」から名前をとったようだ。ロボットはX,Y,Zの座標軸に沿って直角に動く、シンプルな構造になっている。
同センターのリサーチ・フェローであるジャクシ・ライトナー氏によると、このデザインとした理由は、「動作計画がまだまだ難しいものであることと、サクション・カップを軸の中心に来るようにしたかったから」だと説明した。グリッパーとサクション・カップが組み合わされたハイブリッド式ハンドでは、機構が複雑になり、またカップの位置が中心からずれてしまう、それを避けたかったという。2016年にはバクスターを使っていたことと比べると、かなりの簡易化である。
グリッパーが小型なのも特徴だ。同チームは75%のアイテムはサクションで把持できると予想し、グリッパーが必要になった場合も、大きなハンドは要らないと見ていた。把持した対象物の確認は、リスト下部のカメラ、フレームに付けられた第2のカメラ、ビン下に設置された計量器の3方法で行なった。
同チームの強みは、ビジョンだ。ARCでは、あらかじめわかっているアイテムに加えて、現場で16の新しいアイテムが与えられる。チームはこれを30分でロボットに学習させなければならないのだが、ACRVは各アイテムについて7点の写真を撮るだけでよく、データ・オーグメンテーションによって補完し、それをファイン・チューンするという。
そしてコストである。カートマンはかなりの部分が3Dプリントされている。この記事によると、センサーも含めてこのロボットを作るコストは3万オーストラリア・ドル(約265万円)以下。ライトナー氏は、安く作ることにこだわったと語っている。
同チームは、ARCの準備のためにのべ1万5000時間をかけたらしい。「企業と違って、アカデミアでは現実世界の問題に対処するロバストネス(システムの強靭さ)に欠けることが多いが、われわれは80:20ルールに法ってビジョン・システムとロボティクス・システムの統合に力を入れた」とライトナー氏は語った。80:20ルールとは、20%の機能性向上のために80%の時間を費やすということで、問題点を明確にしてエンジニアリングのための時間投資を最大化したという意味だ。
ところで、このチーム、ロボットはスーツケースに入れて自分たちで持ってきた。ブースには3Dプリンターもあり、いざという場合には部品をその場で作るつもりだったようだ。決勝戦で戦っている間にも、3Dプリンターは静かな音を立てて仕事中だった。
何とも余裕と遊び心がある。。