残念なアンバウンデッド・ロボティクス。そして……
新しいプラットフォーム・ロボット「UBR-1」が注目を集めていたアンバウンデッド・ロボティクス社が、閉鎖されるという話。すでにご存知の方も多いと思うが、『IEEEスペクトラム』が伝えた。
これによると、「ウィロー・ガレージとのスピンオフ契約が理由で、シリーズAの投資資金調達ができない」とのこと。UBR-1の生産がようやく始まることになっており、また同社CEOのメロニー・ワイズはロボット界で注目される一人に選ばれたところだった。
スタートアップならば、シリーズAの投資資金を集めるのは死活問題。これが集められないということは、ウィロー・ガレージが100%の所有権を保持しようとしているのか、それとも外部からの資金調達について難しい条件を提示しているのかだろう。
ただ、閉鎖というには、同社のウェブサイトがまだ残っているのがおかしい。消えたのは、「About Us」(わが社について)のページのみ。ロボニュースの記憶では、ここには4人の共同創業者の紹介があったはずだ。ここだけ消えて、残りすべては同じ。一見したところでは、まだ注文を受け付けているようにも見える。
通常この状態から察せられるのは、アンバウンデッド・ロボティクス社は閉鎖されるのではなく、経営陣が入れ替えになるということだろう。もちろん、あくまでも推論。
実際、ワイズのリンクトインには、ロボット開発者として8月から地元のスタートアップに関わっている旨が記されている。名前はないので、どの会社かはわからないし、自分で起業したのか他の会社に加わったのかも不明。だが、すでに新しいスタートを切ったようだ。
さて、ウィロー・ガレージについても別のニュース。こちらも『IEEEスペクトラム』のものだが、同社のオーナーであるスコット・ハッサンがウィロー・ガレージのあった同じメンロパークでスタートアップ村を作ろうとしているというのだ(場所は別)。
スタートアップ村というのは、今よくあるアクセラレーターのようなものだろう。スタートアップのチームを集めて独り立ちできるように養成し、世に送り出す。その際、投資も行うので、スタートアップが成功すれば見返りもあるというモデルだ。
ただ、ハッサンのスタートアップ村は職住接近で、全敷地30,000平米(約9,075坪)のこの開発計画には、事務所(18,500平米)、アパート(18,500平米)、店舗などが盛り込まれており、起業家らがここに住みながら働くという構想になっているという。よくあることだが、この開発が交通渋滞を生むなどの理由を掲げて、近隣住民の反対運動も起こっているようだ。
これら2件が関係しているのかどうかは不明だが、ロボニュースには思い出すことがある。
それは、今年4月にシリコンバレーで開かれたロボット会議でのこと。登壇していたスコット・ハッサンは、「ウィロー・ガレージはこれからどうなるのか?」と尋ねられて、こう言った。「ウィローとは柳のこと。柳のように柔軟に変化してもいいだろう」。つまり、ウィロー・ガレージも別の事業として蘇る可能性があることを示唆していたわけだ。ひょっとすると、このスタートアップ村がそれかもしれないのだ。
もうひとつ、同じ会議での風景。こちらはハッサンとワイズの両者が共にステージ上にいた時だが、「ウィロー・ガレージの運営で難しかったことは何か?」と尋ねられたハッサンは、「人の管理」だと答えて、次のように続けた。「メロニーだって、今は自分の会社だから一生懸命に働いているけれど、ウィローの時はそうじゃなかったでしょ」。
ワイズが苦々しい顔をしていたのは言うまでもないのだが、ハッサンの辣腕経営者ぶりが見えた一瞬。彼を「予想不可能な人物」と評する声もあり、アンバウンデッド・ロボティクス社に対して冷徹な鉈を振るったとしても、おかしくない。
あとは、グーグル説も出ている。ハッサンはグーグルとも近いので、アンバウンデッド・ロボティクス社はグーグルに売却されるのではないか、というわけだ。
いずれにしても、アンバウンデッド・ロボティクス社のゆくえについては、何か続報が入り次第お伝えしよう。