『ロボビジネス2014』会議レポート<その1>「ロボット会社は、他社にない方法で問題解決できる」。アイロボットCEOコリン・アングル氏の基調講演から
去る10月15〜17日まで、ボストンで『ロボビジネス2014』会議が開催された。『ロボビジネス』は、ロボット技術を新しいビジネスに発展させることを目指して、関係企業や研究者、開発者らが集まる会議。毎年アメリカで開催される他、ヨーロッパでも開かれている。産業ロボットの次に、どんなロボットがやってくるのかをかいま見られる会議と言っていいだろう。
基調講演のひとつで壇上に立ったのは、アイロボット社共同創業者でCEOのコリン・アングル氏。同社のお掃除ロボットのルンバは、発売後12年間に世界中で25億ドル分を売り上げたという。同氏によると、ロボット掃除機の75%は同社製らしい。
ロボット会社が持つ3つの利点
「ロボット掃除機を発売している競合会社には、多くのリソースを持つ大企業もある。それでもアイロボットのルンバの機能が高いのはなぜか」。アングル氏はそう語って、ロボット会社ならではの利点を活かして製品開発をすることが重要だと強調した。
同氏が言うロボット会社が持つ利点は3つだ。ひとつは、「単なるスマートな家電ではなく、人間とロボットをひとつのものとして捉えた製品を作ることができる」点。
ルンバの開発でも、これまでの掃除機のユーザーがやっていることをよく考察した。塵のある箇所を目で確かめる、家具をよける、邪魔なものをあらかじめ取り除く、ブラシに引っかかった糸などを除去する、ブラシをきれいにする、といったことだ。
ルンバはそうしたことを、自律的にこなせるようにした結果、家具の下に入り込み、絨毯の端にもひっかからず、塵を認識でき、めんどうなメンテナンス不要のお掃除ロボットになった。「もしロボット電子レンジを作るならば、調理法を理解し、パッケージから取り出し、時々蓋を開けて中をかき回し、テーブルの上に出す、といったことまでできるように考える」とアングル氏は付け加えた。つまり、機能の中にそれだけ大きな役割を盛り込んで製品を考えるということだ。
2つめの利点は、異なったツールを大胆に用いることができる点。ロボット開発者は、アームや認識技術など珍しいツールを、躊躇することなくロボットに付けてきた。そして、3つめの利点は新しい技術のパイオニアである点。これらの利点を活かすようにすれば、ロボット開発者は他の技術者に負けることがないはずだという。
ただし、ロボットをビジネスとして成立させる際の注意事項はある。それは、ロボットのゴールは、人間を複製することではなくて、人間の問題を解決するところにあると肝に命じることだ。人間の足や手をロボットで実現しようとするのは技術的には驚異だが、ビジネスとしては同じことをもっと簡単に実現する方法があるはずだ。それを模索しなければならない。
借りる技術と独自開発の技術を組み合わせる
1990年代と現在とを比べると、ロボットのための要素技術はかなり揃っている。特に独自に開発しなくても、三次元イメージング、タッチスクリーン、音声認識技術など、他から借りられる既存の技術も多い。借りてくる技術と独自に開発する技術の組み合わせによって、他との差別化が図れるはずと、アングル氏は述べた。
その上で、今ロボット会社がマスターすべき技術は、ナビゲーションと深度センサーだという。前者では、SLAM技術が研究から市場に出てきているが、まだ高価格。それに代わって、ビジュアルSLAMが安くなってきた。また、後者では、ジェスチャーを認識できる技術も有用になる。
こうした技術の実用化によって、可能になることが広がっていくが、その時にロボット会社としてのルールを持ち続けることが重要な強みとなる。それと同時に、人々が買えるようにコストを抑えながら、大きなバリューを提供することが成功への道だと語った。
ロボット開発者は強みを持っている。それを失うことなく、人々の問題を解決するものを作れというアングル氏のことばには、勇気づけられた人も多かったはずだ。